演出の言葉

それは確か、まだ年端もいかないような幼少期のことだった。母にもらった大きな絵本『はらぺこあおむし』。

小さな私のお気に入りであった。まあ簡単に言ってしまえば、その名の通り腹を空かせた青虫のお話である。幼い私はボロボロに擦り切れるまで何度もそのページをめくった。

今考えてみればその頃の思い出なんて『はらぺこあおむし』以外なんて思い出せない。だから私は今の今まで『はらぺこあおむし』は誰もが幼少期に通る路だと信じていた、が。世間に出てみれば案外そうでもないらしい。

小さな頃の私は絵本が大好きだった。全く同じ絵と文であるはずなのに、毎回違うお話のように聞こえてきたから。絵本の魔力というか、それが彼らのすごいところだ。今現在の、これ以上ないくらいに世間ずれしてしまった私が読んだところで、腹を空かせた青虫のお話に変わりないのに。果たしてこれは絵本の魔法なのか、はたまた子どものずば抜けた想像(創造?)力なのか…私には判りかねるが。

すっかり脱線してしまったが今回の「SHADOWS」は煙にとっての旗揚げ公演である。『後味の悪い芝居がやりたい。好きなことをやってみたい。』という居石くんの願望(?)を軸に、今まで奮闘してきた煙のメンバーたち。演出・構成とでかいことを言ってはいるが『SHADOWS』は、メンバーみんなで創った作品なのである。やりたいことをやりたいようにさせていただいた。自慰公演と鼻で笑ってくれても構わないさ。世知辛いこの現代を生きる私達の葛藤を、少しでも感じて頂けたら幸いである。

本日は御来場いただきまして誠にありがとうございました。

久保田友理